医学博士のあれこれ
博士号、特に医学博士についてのお話です。前回のお話の続きですが、博士の中で最も多いのが「医学博士」だといわれています。ほとんどは医学部を卒業したお医者さんが取得していますが、お医者さんに博士号が必要かというと必ずしも必要ではありません。しかし、多くのお医者さんが取得する傾向にあります。今回は、お医者さんが何故学位を医学博士を取得するのか、考えてみたいと思います。
お医者さんが「医学博士」を取得する理由
医学部以外の学生が大学院に入学して学位(修士号、博士号)を取得するのは、将来、研究を仕事にしたい人がほとんどです(特に博士号!)。一方、お医者さんで医学博士を取得しても、研究を仕事にする人はごく少数です。それでは、なぜお医者さんが医学博士を取得するのか、そこには様々な理由が潜んでいます。さっそくその理由を見て行きましょう☆
① 医局の方針であるため
実はこの理由が最も多いんじゃないかなと思います。入局した大学や医局にもよりますが、医局の方針で、入局して数年経ったら大学院に行かせるという方針をしばしば見かけます。お医者さんが大学院に入学すると、「学生」になるので、お給料を払う必要がありません。しかもお医者さんだけに非常に優秀な可能性が高く、たくさん実験をして論文を書いてくれる可能性を秘めています(不思議なことに、研究に不向きな先生も少なくありませんが・・・)。しかも、「学生」なので、大学に授業料まで払ってくれます。
すなわち・・・
医局にとっては、無料で働いてくれる優秀な労働力
大学にとっては、授業料を払ってくれる学生
本人にとっては・・・
お金を払って、労働力を提供する、労働者(涙)となります。
(当の本人はアルバイトで学費と生活費を稼がなければいけません・・・涙)
では、なぜこんな理不尽なシステムになっているかというと、大学・大学病院の役割に遡ります。(大学病院の役割についてはこちら;大学病院の役割(研究編・その1))。大学・大学病院では研究を行って、論文を発表していくことが至上命題になっていますが、お医者さんが患者さんを診察して、さらに実験をして論文を書くことは時間的に不可能に近いんです。
医学部以外の学部では、研究だけ行って論文を発表していますが、医学部は患者さんを診療しながら研究も進めて行かなければならず、他の学部と比べて非常に厳しい環境です。そんな厳しい環境の中で、優秀で人件費が要らない、ありがたい存在がお医者さんの大学院生なんです。
そんな理由もあって、所属している医局から大学院へ進学しろとの指令が下ることがあります。ただ、昔は「医学博士」は取得するものだ!っと言われて、多くの人があまり考えずに大学院生になっていましたが、最近は「博士号」をもっていてもあまり役に立たないのに対して、〇〇専門医の勉強は臨床に直結するので、専門医の資格を取得を重視する先生が増えてきました。
ひょっとすると医局の指令で医学博士を取得しようとする先生は減るかもしれませんね。。
ちなみに、最近少し問題になっている大学病院の無給医(本当にお給料無しで働いているお医者さんです。詳しくはこちら;これは大変! 大学病院の無給医の話(1))と、このような大学院生は関係が深く、無給医の隠れ蓑として使われることもあります。
なんだか厳しい世界ですね・・・
長くなってきたので、次回に続きます。。。
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